痩せすぎの危険性

テレビなどのメディアの世界では、肥満は嘲笑の対象となります。太った体型のタレントは笑いを誘い、本人もそれを充分に認識した上で肥満を自虐的に扱ったりします。その一方で見た目も美しく、スリムな体型の女優やアイドルは理想的な恋愛事情を演じたり、フラダンスの衣装についてまばゆいばかりのスポットライトを浴びながら、ステージ上で力いっぱいの自己表現を行っています。

もちろん、その人が美しいという条件において、痩せていることが全てだとは言わないでしょう。容姿が端麗であるということは、スタイルのみならず見える部分の全てが優れていることに他ならないからです。しかし、また一方で、痩せていることは絶対条件のひとつとされていることもまた事実でしょう。美しさは痩せていることだけでは成立しないが、痩せていなければ美しいとは言えない。というわけです。

では、痩せていれば痩せているだけ美しさに磨きがかかるのかといえば、決してそんなことはありません。安易に痩せることをエスカレートさせてしまえば、健康上とても危険な状態にだってなるものなのです。

そもそも身体に蓄えられている脂肪などの栄養素は、その人が生きていく上で必要なエネルギーでもあります。これが極端に枯渇してしまうと、脳は生命の危機を察知して防御体制に入ります。具体的には摂取されたエネルギーを、より多く蓄えるため脂肪として蓄積すると同時に、筋肉を分解してエネルギーに替えて使い出します。こうなると基礎代謝で大きな役割を担う筋肉が不足し、ますます脂肪の蓄積に拍車がかかるのです。

また、病気に対する抵抗力にも影響が出ます。健康状態では問題なかった状況において、容易く風邪をひくようになると同時に症状が長引き、なかなか改善しないということも起こるようになるのです。

冷静な判断力が残っていれば、痩せることによって自分の身体に生じている変化が尋常でないことくらいすぐに気がつくものなのですが、痩せることで美しくなっていると感じる脳は、その異常に見てみぬふりをしてしまいます。その結果、取り返しのつかない状況まで健康状態を追い込んでしまい、最悪の場合、生命維持の危機に陥ることだって珍しくありません。こうしたことが充分にあり得るのだという認識が一般化する一方で、メディアや世間は常に痩せることを賞賛し続けます。痩せることと引き換えに健康を失う危険は常に認識しておかなければ、本来の痩せる意義が失われてしまうのです。